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北野唯我著「このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法」を読む

ある程度、社会人経験を積むと転職について考える。そんな時、役に立つのがこの本だ。

小説と言う形式だが、内容は、転職の考え方を身に着けるハウツー本である。

三十歳になった主人公・青野が転職に悩むシーンから始まり、転職エージェントを利用することを決める。エージェントの黒岩から指導を受け、転職に成功するという物語だ。序盤にある黒岩の指導は的を得ている。

 

黒岩「よし、質問を変えよう。君の給料はなぜ発生する?」

青木「なぜって、会社に言われたことを、ちゃんとやっているからでしょうか」

黒岩「それが、上司を見て働く者の発想なんだよ。まったく違う。給料は、君が『自分』という商品を会社に売り、会社がそれを買うから発生している。あくまで売り込んでいるのは君なんだ。君はたまたま今の会社を選んだだけで、会社は君をたまたま買っている。つまり、雇用は一つの『取引』なんだよ。マーケットバリューを理解するには、まず自分を商品として考えることだ。」

 

黒岩のこの説明は、まったくもってその通りだ。資本主義社会では、労働者は自らの労働力を会社に売り、生計を立てなくてはならない。この本は随所に、このようなマルクス経済学の発想があり、その視点から書かれている。

もう一例紹介する。

黒岩「いいか。組織にいると、給与は当たり前のようにもらえるものと勘違いする。そして大きな会社にいる人間ほど、実力以上の給与をもらっていることが多い。その中の多くの人間は、会社が潰れそうになったり、不満があると、すぐに社長や上の人間のせいにする。だがな、勘違いするんじゃない。君が乗っている船は、そもそも社長や先代がゼロから作った船なんだ。他の誰かが作った船に後から乗り込んでおきながら、文句を言うのは筋違いなんだよ」

この本を読むと、会社とは何か、仕事とは何かを掴める。

 

この本は、自分の社会人としての価値(マーケットバリュー)の高め方、判断の仕方、数字では表れない会社や業界の見方、転職エージェントの活用の仕方、会社の在り方が小説という形で表現されている。

転職について考えている人だけではなく、社会人全員を対象とした良書である。

 

追伸

マルクス経済学の立場から書かれていると考えるもう一つの理由は、土地に縛られていないことを前提として物語(転職の指導)が進んでいるからだ。青野は都会暮らしで未婚である。なので転職先候補は多いし、引っ越しも可能だ。

しかし現実はそうはいかない。この本だけを真に受けて転職活動するのは必ずしも良い結果にならない。あくまでも参考として、自分流にアレンジして、時には青野の様に誰かに相談し、考えるのが良いと思う。

 

このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法

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