書評メモと新聞メモ
週刊現代 2019年3月23日号にて、佐藤優が書評している。
幕連著「官邸ポリス」
限りなくノンフィクションに近いフィクションであるとのこと。首相機関説で動く、官邸ポリス生み出された意図とは。
小島寛之著「暗号通貨の経済学」
近い将来、我々は現金ではなくクレジットカードを使用することになる。東京五輪に向けて、政府が国家戦略としてクレジットカードを推奨しているからだ。どうして推奨しているか。お金の流れが明確になるからである。
ITの巨人たちが集めるデータに対して、政府は厳しい態度を見せ、さも国民の見方と言う素振りをしている。しかし、政府もまた国民のデータが欲しいのだ。権力の監視が疎かにならないよう、我々は注意を払わなくてはならない。
2019年3月13日の日経新聞に「学力の経済学」を書いた中室牧子氏の、保育園の無償化についてコメントがあった。
興味深かったので全文を載せる。
【3~5才の無償化にも所得制限を設けるべきだ。一律の無償化は高所得世帯への所得移転になり、格差が拡大する。日本は恩恵にあずかれない人の批判を恐れて一律の扱いをしがちだ。将来世代に借金を先送りして、高所得者に再分配することは正当化されない。
安倍政権が若い世代への投資にカジを切ったことは高く評価する。ただ潜在的な保育の需要を掘り起こし、ますます保育所が不足する懸念がある。保育所の整備と質の向上を優先すべきだ。】
所得に応じて保育料を決めると、共働き世帯だと世帯年収が上がり、保育料が上がってしまう。
保育料を下げるために専業主婦(あるいは専業主夫)という選択をしても、養育費を含む将来の家計を考えると良い選択とは言えず、何のための制度なのかわからなくなる。
書評メモ
「AI時代に輝く子ども STEM教育を実践して分かったこと」中村一彰
ニューズウィーク 2019年3月19日号に広告があった。
他の媒体でも紹介されていたり、書店に陳列されていた覚えがある。
熊野英生著「なぜ日本の社会は生産性が低いのか?」を読む
最近は「生産性」と言う言葉をよく聞きますし、生産性と言う言葉が入った本、雑誌も書店でよく見かけます。
今回紹介する熊野英生著「なぜ日本の社会は生産性が低いのか?」は、新聞、雑誌でよく紹介されている本です。
PRESIDENT 2019年4月1日号に、経済ジャーナリストの渋谷和宏氏の書評があります。
他にも、作家の佐藤優氏が、紹介している記事を読みました(媒体名失念)。
全体的に読みやすい本です。しかし、内容が簡単と言う意味ではありません。
一章では、OECD(経済開発協力機構)加盟国で見る、日本の一人当たりGDPは、一位であるスイスの半分、と言う内容から始まります。テクノロジー上昇による仕事のワンオペ化、日本人労働者の労働モラルの低下と言う、現在の日本の労働者なら、誰でも考えた事のあるテーマを掘り下げています。
「良いものを安い価格で提供する」と言う言葉は、日本で生きてきた人なら一度は聞いた事がある言葉です。これに対しても熊野氏は一石を投じます。
【「なぜ日本の社会は生産性が低いのか?」という問いに対して、日本には多くの分野において突出した非価格競争力を発揮する企業がないからだと筆者は考える。】(P53)
良いものを高く売る必要があるのではないか、と言っているように聞こえます。
二章では、計算式を用いた「そもそも生産性とは何か」を問います。アウトプット/インプット=生産性 これを答えられる人は意外と少ないのではないでしょうか。そこから付加価値、リスクや不確実性について論じます。
不確実性について、人はなぜ前例を重視するのか,そしてその不幸について。
【人はなぜ前例重視なのか。それは、前例があれば不確実性が低いと感じられるからだ。前例とは既知の情報として理解されるので、リスク許容力の低い人も、安全な行動を選択したと言う錯覚に陥りやすい。仕事のコツとして、「この人はリスク許容力が低そうだな」と直感したときは、新しいアイデアを盛り込んでも、さりげなく「前例がある」ことを匂わせるとGOサインがもらいやすい。しかし、変化の速い現代社会においては、前例踏襲で安心していること自体がリスクであるともいえる。これは大変恐ろしいことだ。これほど世界にネットが普及し、情報にアクセスしやすくなったにもかかわらず不確実性が高まっているのはパラドックスだと感じられる。きっと、それはIT情報が不確実性を低下させるために使われていないことに原因がある。】(P130~P131)
新しいテクノロジーの登場によりワンオペ化してしまい、生産性が低くなり、さらにIT情報が、不確実性を低下させない事に使われないために、リスク許容力も低下する、と説きます。とても不幸なことです。
三章では、働き方改革について熊野氏の考えがあり、四章では生産性を上げるための方針があります。
全体的に、様々な目線で生産性に関連する話が飛び交い、とても面白い内容です。
二章では数式が出てきますが、生産性について論理的に考える力をつけてくれます。
生産性は最近のキーワードであり、この本は様々な媒体で紹介されています。
この本を押さえておくと良いでしょう。